○ 読心術
睦月9日です。
雪の石庭

真冬の到来

青蓮院

○ 読心術
「先生、取材の方がお越しになりました」
「ああ、こちらにお通しして」
わたしは、世界的に有名な読心術の先生の秘書として働いている。元々、先生の驚異的な読心術を学びたいと思ってここに来た。わたしのように、若い女性で読心術を志す人間が珍しいということもあり、いつも近くに置いていてくれるようになった。言ってみれば、秘書兼弟子のようなものだ。
「始めまして、月刊ヒューマンのカワイと申します。本日は取材を受諾していただきましてありがとうございます」
取材に来たのは、若い女性記者だった。短いスカートから、長くほっそりした足が伸びている。よっぽど足に自信があるのだろう。
「こちらこそよろしくお願いします。でも、取材の方がこんなにお若い女性だとは思ってもいませんでした」
先生の顔が何だかにやけている。綺麗な女性をみるといつもこれだ。若い女性ならすぐ近くにいるのに……。
「先生の読心術を簡単に説明していただけますか?」
「簡単に言えば表情を読み取ることで、心に思っていることを推察するものです。これを極めれば、ほぼ間違いなく相手の心が読めるようになります」
「先生の場合は、人間だけではなく動物の心も読めるそうですが」
「はい、動物といっても基本的には人間と変わりありません。共通の部分が多いのです。読心術で最も重視するのは眼です。眼をよく観察すると、相手の気持ちが分かるのです。これは、人間も動物も全く同じです」
「と言うことは、眼さえあればどんな動物でも心が読めるのですか?」
「そうですね。ミミズの心を読めと言われても無理ですが、眼があれば大抵は……」
「大抵……ですか。全てと言うわけにはいかないのでしょうか?」
「何事にも例外はあるものです。私の場合も数は少ないですが、例外はあります。まあ、でもほとんどの動物の心は分かります」
先生は、まだにやけたままだ。口調も普段より嬉しそうだ。わたしは、先生の顔を睨みつけた。
「本当に素晴らしいですね。動物の心まで読めるなんて」
この記者、何を感心しているのだ。そんなこと常識ではないか。動物の心まで読めるという常識を越えた能力を持っている。それで先生は、世界的に有名になったのだ。こんなこと誰でも知っている。わたしは、ますますこの記者に反感を持った。
それから、三十分ほど取材が続いた。その間、先生はちらちらと記者の足を見ては鼻の下を伸ばしていた。ここまでにやついた先生を見たことがない。
「今日は本当にありがとうございました」
「いえいえ、何かありましたらいつでもいらっしゃって下さい」
そんな言葉で取材が終了し、記者は帰っていった。
「コーヒーでも入れてくれないか?」
先生がにやけた顔で、わたしに向かって言った。
「はい。分かりました!」
わたしは、ちょっと強い口調で答えた。
「どうしたんだ? 何か怒っているのか?」
「いいえ、怒ってなんかいません! ブラックでいいですよね! すぐに入れてきます」
わたしは足早に給湯室に向かった。背中で先生のつぶやく声がした。
「一体、何を怒っているのだか。本当に女の気持ちだけは分かりゃしない」
寒さ厳しきこの時期癒してくれる花々です。
梅(うめ) 白

シクラメン

完全ハート形

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「先生、取材の方がお越しになりました」
「ああ、こちらにお通しして」
わたしは、世界的に有名な読心術の先生の秘書として働いている。元々、先生の驚異的な読心術を学びたいと思ってここに来た。わたしのように、若い女性で読心術を志す人間が珍しいということもあり、いつも近くに置いていてくれるようになった。言ってみれば、秘書兼弟子のようなものだ。
「始めまして、月刊ヒューマンのカワイと申します。本日は取材を受諾していただきましてありがとうございます」
取材に来たのは、若い女性記者だった。短いスカートから、長くほっそりした足が伸びている。よっぽど足に自信があるのだろう。
「こちらこそよろしくお願いします。でも、取材の方がこんなにお若い女性だとは思ってもいませんでした」
先生の顔が何だかにやけている。綺麗な女性をみるといつもこれだ。若い女性ならすぐ近くにいるのに……。
「先生の読心術を簡単に説明していただけますか?」
「簡単に言えば表情を読み取ることで、心に思っていることを推察するものです。これを極めれば、ほぼ間違いなく相手の心が読めるようになります」
「先生の場合は、人間だけではなく動物の心も読めるそうですが」
「はい、動物といっても基本的には人間と変わりありません。共通の部分が多いのです。読心術で最も重視するのは眼です。眼をよく観察すると、相手の気持ちが分かるのです。これは、人間も動物も全く同じです」
「と言うことは、眼さえあればどんな動物でも心が読めるのですか?」
「そうですね。ミミズの心を読めと言われても無理ですが、眼があれば大抵は……」
「大抵……ですか。全てと言うわけにはいかないのでしょうか?」
「何事にも例外はあるものです。私の場合も数は少ないですが、例外はあります。まあ、でもほとんどの動物の心は分かります」
先生は、まだにやけたままだ。口調も普段より嬉しそうだ。わたしは、先生の顔を睨みつけた。
「本当に素晴らしいですね。動物の心まで読めるなんて」
この記者、何を感心しているのだ。そんなこと常識ではないか。動物の心まで読めるという常識を越えた能力を持っている。それで先生は、世界的に有名になったのだ。こんなこと誰でも知っている。わたしは、ますますこの記者に反感を持った。
それから、三十分ほど取材が続いた。その間、先生はちらちらと記者の足を見ては鼻の下を伸ばしていた。ここまでにやついた先生を見たことがない。
「今日は本当にありがとうございました」
「いえいえ、何かありましたらいつでもいらっしゃって下さい」
そんな言葉で取材が終了し、記者は帰っていった。
「コーヒーでも入れてくれないか?」
先生がにやけた顔で、わたしに向かって言った。
「はい。分かりました!」
わたしは、ちょっと強い口調で答えた。
「どうしたんだ? 何か怒っているのか?」
「いいえ、怒ってなんかいません! ブラックでいいですよね! すぐに入れてきます」
わたしは足早に給湯室に向かった。背中で先生のつぶやく声がした。
「一体、何を怒っているのだか。本当に女の気持ちだけは分かりゃしない」
寒さ厳しきこの時期癒してくれる花々です。
梅(うめ) 白

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